川内山塊 木六山(825.1m)、七郎平山(906m)、銀次郎山(1052m)、銀太郎山(1112m)、五剣谷山(1187.7m)、青里岳(1215.5m)、矢筈岳(1257.5m) 2012年4月28-30日  カウント:画像読み出し不能


所要時間

4/28 6:01 林道崩壊地−−6:59 悪場峠 7:10−−7:36 登山道に出る−−7:42 仏峠−−7:48 水無平−−9:13 木六山(休憩) 9:38−−10:56 七郎平山(休憩) 11:24−−12:07 銀次郎山(休憩) 12:35−−13:25 銀太郎山(休憩) 14:04−−15:02 五剣谷山−−15:10 幕営地

4/29 4:44 幕営地−−6:04 青里岳−−7:19 休憩 7:44−−8:30 矢筈岳(休憩) 9:46−−11:41 青里岳(休憩) 12:14−−13:30 幕営地

4/30 4:54 幕営地−−5:54 銀太郎山を巻く−−6:41 銀次郎山(休憩) 7:08−−7:40 七郎平山を巻く−(20分程度立ち話)−9:10 木六山(休憩) 9:41−(20分程度立ち話)−10:36 水無平−−10:52 仏峠−−11:03 悪場峠−−11:48 林道崩壊地


場所新潟県三条市/五泉市
年月日2012年4月28〜30日 残雪期幕営
天候大体晴れ
山行種類残雪期登山
交通手段マイカー
駐車場林道崩壊地手前の路上に駐車
登山道の有無銀太郎山までは夏道あり
籔の有無五剣谷山〜青里岳間と矢筈岳手前が灌木籔漕ぎ
危険個所の有無無し
山頂の展望概ねどこの山頂も展望良好
GPSトラックログ
(GPX形式)
無し
コメント・悪場峠より矢筈岳を往復。このコースを歩くのに通常は3日必要
・銀太郎山まで夏道あり。8割は夏道を歩けた。逆に言えば夏道が無ければ藪漕ぎが続いたはず。銀太郎山から矢筈岳まで登山道無しで無雪期は藪が酷くほぼ不可能
・現在、矢筈岳登山で一番使われるのは谷倉林道から魚止山経由だが(ここは最初から最後まで夏道無し)、雪が落ちるのが早く稜線上の藪漕ぎが多い。ただし、それなりの人数が毎年入っているので徐々に踏跡が明瞭化しつつあるようだ
・残雪豊富で幕営可能箇所多数ありだが、通常は初日で五剣谷岳まで入って幕営、翌日に荷物をデポして矢筈岳を往復して再び幕営、最終日に五剣谷岳から下山となる
・五剣谷岳から矢筈岳の往復で通常は10時間ほどかかるため、初日に五剣谷岳まで入らないと2日目が苦しくなる
・主要な藪露出箇所は、五剣谷岳の下りと矢筈岳の登り。それぞれ200mくらい潅木藪漕ぎが必要。他の藪は短距離なので問題なし
・今回はピッケルは使用したがワカン、アイゼンは使用しなかったが、雪質や雪上歩行技術によっては必要になる可能性あり。急斜面は3,4箇所あり、アイゼンの出番があるとしたらそこだろう
・悪場峠は登山ポスト無し。駐車場は無く路肩に適当に止める
・4/30日現在、上杉川から悪場峠に至る林道は杉川を渡って200mほどで斜面崩壊があり通行不能。そこから1kmほどにも崩壊地があり、いつ復旧するか不明
・雪が残っていた影響か、悪場峠登山口は分かりにくく初めての人は確実に迷う。林道最高点を過ぎて最初のカーブで自然林の斜面を登る。よく見たら目印があった(往路では気づかなかった)
・仏峠から水無平に下る道はやや薄く潅木が煩いが迷うことはない
・水無平は一面の残雪で夏道は全く見えない。目印もほとんど無く、地形図を見てルート判断必要。雪があれば適当に斜面を登ることも可
・七郎平山は通常は山頂西側を巻いてしまうので要注意
・銀太郎山も普通に歩くと山頂西側を巻いてしまうので要注意
・五剣谷岳山頂付近は雪が落ちて潅木藪が出ている。西側稜線上に微かに踏跡があるが藪漕ぎ必要。山頂は地面が出ているが凸凹があり幕営に適さない
・五剣谷岳〜青里岳間1096m峰から最低鞍部まで雪が落ちて潅木藪漕ぎ。ここも数かに踏跡あるが結構強烈
・青里岳山頂から南東に伸びる尾根が右に屈曲する箇所で僅かに藪漕ぎ
・1044m峰への登りはかなりの傾斜。雪が締まっている場合はアイゼン必要
・1180m峰から矢筈岳山頂まではほぼ藪漕ぎ。薄っすらと踏跡あり
・矢筈岳は地面が出ているが高い木は無く大展望




林道の土砂崩れ現場。車はここまで 路肩崩壊もある
悪場峠。登山口の標識見当たらず
峠から南側の斜面に取り付く 残雪を辿る
しかし上部で雪が消える 籔を漕いで進む
尾根を下っていると道に出た 水無平を見下ろす
仏峠 水無平に出た。ここで一面の残雪
たま〜に目印がある程度 夏道不明で残雪がつながる斜面を適当に登る
稜線が近い。結構な急斜面 稜線に出る。残雪たっぷり
夏道に乗る 夏道はよく手入れされているよおうだ
先行者の足跡。真新しい
このピークが木六山 木六山山頂
木六山ですれ違った単独男性
木六山から見た粟ヶ岳(クリックで拡大)
七郎平山へ向かう。まだ立派な夏道
それなりの残雪だが尾根直上は雪なし
七郎平山直下の急な登り 間もなく山頂。先行パーティーは山頂を巻いた
七郎平山山頂へ向かう 七郎平山山頂
天気良すぎで山頂南側の木陰で休憩
七郎平山から見た銀太郎山へ続く尾根
まだまだ夏道が続く。道が無ければ灌木藪
雪が割れている 銀太郎山山頂。先行パーティーに追いつく
銀太郎山から見たパノラマ展望(クリックで拡大)
先行パーティーに続き、次の銀太郎山へ向かう。銀太郎山までもほとんど夏道が出ていた。すぐに私が先行する
夏道 夏道が無ければ灌木藪か
1100m峰へ登る 奥のピークが銀太郎山
このピークが銀太郎山。冬ルートは巻くような?
銀太郎山から見た東半分の展望(クリックで拡大)
銀太郎山から見た西側の展望(クリックで拡大)
銀太郎山山頂。傾いた山頂標識あり 山頂南側は籔が出ているので西を巻く
もう夏道は無いので残雪をつなげて歩く この先は快適な雪稜歩きが続く
鞍部より五剣谷岳に登り返す 広大な斜面。結構急斜面
振り返る もう少しで稜線
五剣谷岳西側の雪庇上から見た北側の展望
五剣谷岳西側の雪庇上から見た南側の展望(クリックで拡大)
空身で雪庇より五剣谷岳山頂に向かう。灌木藪漕ぎ 山頂が近付くと籔が少しマシになる
五剣谷岳三角点 五剣谷岳山頂
五剣谷岳山頂西側から西を見る。この先で幕営 デポしたザックを背負う
鞍部から五剣谷岳の登りにかかるパーティー 小鞍部付近の稜線直下で幕営。風除けに最適だった
テントを見下ろす 翌朝、まずは青里岳を目指す
矢筈岳はまだ遠い(奥のピーク) しばし快適な雪稜歩き
手前が1096m峰 1096m峰の下りは雪が落ちて灌木藪
灌木藪漕ぎ中 かなり強固な部分も
もう少しで1050m鞍部 1050m鞍部の目印。目印はこれくらいしか記憶に無い
鞍部より登り返しは快適な残雪! これが青里岳山頂部
1096m峰で休憩する後発パーティー 青里岳山頂
青里岳から見た矢筈岳
青里岳から見た粟ヶ岳〜白山
青里岳から見た浅草岳〜守門岳(クリックで拡大)
青里岳山頂より籔を横断して南東に下る 1190m肩から青里岳を振り返る
1190m肩から20mほど籔に突入 籔を抜けると広くて急な尾根を下る
矢筈岳へと続く稜線。山頂直下以外は雪が乗っている 真新しいカモシカの足跡
990m峰付近から見た稜線 1054m峰への登り。急斜面
1054m峰から見た青里岳。五剣谷岳がもう遠い
1054m峰から西を見る 1040m鞍部で休憩
1040m鞍部から矢筈岳山頂に立つ登山者が見えた 1180m峰を北から巻いている最中
1180m峰より先は矢筈岳までほぼ灌木藪漕ぎが続く 藪漕ぎ中
1180m峰への登り。ほぼ籔漕ぎ 1180m峰てっぺん付近のみ残雪あり
1230m峰への登り。完全に籔漕ぎ 1230m峰から見た矢筈岳
やっと雪に乗る 矢筈岳山頂。魚止山から来た登山者
矢筈岳から見た南半分の展望(クリックで拡大)
矢筈岳から見た越後三山界隈(クリックで拡大)
矢筈岳から見た粟ヶ岳界隈(クリックで拡大)
矢筈岳山頂。標識担ぎあげ御苦労さま 矢筈岳から見た1040m鞍部通過中の後発パーティー
矢筈岳から東を見る。多数の足跡あり 下山開始。往路を戻る
1230m峰手前で後発パーティーとすれ違う 残雪はまだ先。籔漕ぎ続行中
1180m峰手前でやっと残雪に乗る やっぱ残雪歩きは籔漕ぎより格段に楽だ
1054m峰の急な下り。雪が緩みノーアイゼンで前を向いて下れた 青里岳への登り返し開始
青里岳への登り返し。きつい! 1190m肩直下で少しだけ籔漕ぎ
籔を抜け青里岳への最後の登り 青里岳山頂
1000m峰付近を矢筈岳→青里岳方向に進む単独登山者。
後発パーティーに聞いたがこの人とすれ違わなかったとのこと
青里岳から五剣谷岳に向かう
下る 尾根上にもクレバス。南を巻いた
1096m西側の籔の登りが待っている 1096m峰から見た五剣谷岳
籔が終わり、あとは残雪歩き 1120m峰
この先の鞍部がテント設置場所
広〜い尾根を進む テント到着。時刻が早いがこのまま幕営に
かなり古くなったゴアライトです 翌朝、テント撤収
3人+1人パーティーのテントとツェルト
五剣谷岳西側から帰路の尾根を見る。今日は高曇り
五剣谷岳からの下り この先は横移動が多い
稜線上の雪が割れた個所は西を巻く このピークが銀太郎山
銀太郎山南側。ここも西を巻く 銀太郎山山頂直下
銀太郎山より先は雪が来た部分は夏道利用 銀次郎山へ向かう
夏道で大いに助かる
銀次郎山山頂
銀次郎山下り始めも夏道が出ていた
七郎平山は西を巻いた 七郎平山北側の急斜面の下り
奥のピークが木六山
木六山」山頂
木六山から見た銀次郎山方面(クリックでちょっとだけ拡大)
木六山より下る カタクリが満開
水無平へは夏道を辿らず最短距離で下る
水無平 水無平を横断し、悪場峠へ
トラバース道 仏峠
夏道を正確に辿る 稜線を東へ下る
悪場峠が見えた。峠の東側から登るのが泥甲斐 私同様、夏道入口が変わらず迷っていた単独行の男性が登っていく
林道を歩いて下る


 新潟の藪山は数多いが、毛猛山塊最高峰の毛猛山と川内山塊2番手の矢筈岳(最高峰は登山道がある粟ヶ岳)が2大巨頭だろう。毛猛山は既に登ったが矢筈岳はどう登ろうかと地図を眺めて考えた。一番近そうなのは東側を流れる倉谷沢沿いの林道から魚止山経由で登るコースで、問題は山に雪がある時期に林道が除雪されるかどうかだ。ネットで検索するとこのコースで登っている記事を多数発見、通常は大型連休には林道は通行可能になっているようだ。最短コースと言っても魚止山から矢筈岳間の距離が長く、よほどの覚悟をしないと日帰りは無謀、普通は1泊だろう。

 他にどんなコースで登られるのか検索してみると、銀次郎山、銀太郎山経由でも登られていた。ここは起点が悪場峠でルートが長く通常は2泊が必要だが、木六山、七郎平山、銀次郎山、銀太郎山、五剣谷岳、青里岳、矢筈岳と川内山塊の数多くのピークを踏めるのが大きな魅力だ。せっかくの大型連休で前半は好天の予報が並んだこともあり、悪場峠起点コースに決めた。問題は悪場峠まで車で入れるかどうかだが、今年の記録が無いか検索したが発見できなかった。ダメなら車道を歩く覚悟で出かけた。

 安田ICで降りて上杉川を目指して進んでいき、チャレンジランド杉川への分岐を見送って悪場峠に向かう直進の道には「1.5km先で路肩崩壊のため通行止め」の看板が。地形図ではチャレンジランド杉川から破線が伸びているのでそちらから登ることを考え、チャレンジランド杉川に向かったが、敷地を過ぎるとまだ雪が残る林道で車の通行は難しく、敷地内は登山者用駐車場は無くチャレンジランド杉川利用者以外の駐車禁止とのお触れもあって断念、悪場峠への道を車で行けるところまで入ってその先は歩きに切り替えることに。杉川を渡る橋を通過して最初のカーブの先で斜面崩壊があり早くもアウト。ここからスタートだ。今シーズン初めての幕営装備に3日分の食料、ワカン、アイゼン、ピッケルが重い。

 崩壊地点は木を巻き込んで崩れているので大ザックが引っかかって鬱陶しい。それを抜ければ舗装された車道歩きだが、まだ雪も残っており崩壊が無くてもあまり車は入れなかった。標識にあった路側崩壊箇所は残った道路幅からして車の通過は微妙なところ。この2つの補修工事が必要であり、林道が開通するのはいつになるのやら。崩壊地以降は良好な舗装道路が続くがまだ雪が残っていてどのみち車で入るのは無理だった。案内の路肩崩壊地は車の幅を残して派手に崩れており、ここも車の通過は無理。

 地形図では悪場峠からの登山道は出ていないので入口が不明で、道が雪に埋もれていたら標識がないと見つからない心配があり、峠が近づいてから右手に踏跡がないか探しながら歩く。林道の最高点が悪場峠だが切り通しであり直接尾根に取り付くことはできない。少なくとも尾根の西には踏跡らしき存在は確認できず、東側の雪の下に道があるのだろうか。標識類は皆無。もしかしたら東に下ったところにあるかもしれないと空身で偵察しに行ったが、尾根末端を巻く箇所にもそれらしき標識はなかった。最初から藪漕ぎ覚悟で雪を拾って適当に登ることに。

 峠東側の杉植林と自然林の境界を登り、自然林の雪が無くなったところで雪が残る植林に移動。最終的に水無平に乗り移るのなら尾根上ではなく尾根西側を巻くように道がある可能性もあり、植林帯を横切って西側の尾根に乗り移ったが道は皆無。見える範囲の斜面途中に道がある気配もない。

 藪は薄いのでこのまま尾根を突き上げることに。背の高いブナが中心で地面付近は僅かな笹と薄い灌木で歩きやすいが、昨日の雨でまだ濡れているので衣類が少し濡れるのがちょっと・・。高度を上げて450m峰を越えて鞍部へと下っていると右手から薄い踏跡が合流、しかし踏跡レベルよりさらに薄く、悪場峠からの道とは思えない。少し下ると今度は左から道が合流、今度は道と呼べるレベルで悪場峠からの登山道に違いない。いったい登り口はどこだ? それは帰りに検証することにして先に進む。

 「仏峠」と書かれた460m小鞍部を乗り越えると眼下に雪に覆われた水無平が広がる。ここから先は斜面のトラバースでやや歩きにくく、道が少し薄くなったような。水無平北端に降り立ち、適当に南に進む。帰りにこの入口が分かるか心配だったが、そこだけ目印が付けられていたので問題なし。

 水無平はどこも雪に覆われて夏道の気配は皆無、適当に南下する。ここから見える斜面も雪が残り、稜線へは適当に上がることが可能そうだ。地形図では尾根の南側に夏道があるようだが、この雪では入口が分からないだろうから雪をつないで適当に斜面を登った方が早いだろう。水無平は2カ所くらい目印を見ただけだったが、チャレンジランド杉川から上ってくるルートとはまだ合流していなかったのかもしれない。

 上まで雪が繋がっていそうな所から斜面に取り付き、徐々に傾斜が出てくる斜面を登っていく。雪さえあれば藪の心配はないが、この斜面は元々背の高いブナが中心で地面付近の藪はほとんど無いらしい。最後はそれなりの急斜面となるが標高が低く気温は高めで雪が柔らかく、ピッケルを活用してアイゼンを付けないまま稜線に出た。

 稜線の東側はたっぷりの残雪であった。緩く下って最低鞍部でリボン登場、夏道入口だ。ここから新しい複数の足跡が登場、チャレンジランド杉川発の先行者がいるようだ。目的地は矢筈岳だろうか。登りにかかると尾根上の雪は消え、夏道が露出するようになる。尾根東側には雪棚が残るが上り坂は地面の上を歩く方が格段に楽なので、往路は夏道が使える場所は全て夏道を歩いた。良好な登山道で藪は刈られて歩きやすい。新潟でこの標高で道がない藪尾根だと根曲がり灌木だろうな。

 最初のピークである木六山に到着すると先行者(正確には先行者ではなかった)の男性が休憩中。山頂は地面が出ていて高い木もなく展望良好。ただ、土地勘がないので見えている山がどのピークなのか全く分からないのが残念だ。でも最終目的地の矢筈岳はまだ見えないのは確実だ。男性もこれから矢筈方面に向かうのだとばかり考えていたが、予想とは逆方向で本日はお帰りで下山方向に歩いていった。矢筈まで行ったのか聞かなかったが、この時間にここなのだからたぶん行ったのだろう。となると、今までの足跡の主はもっと先行しているわけか。

 なおも良好な夏道が続く。夏道が尾根直上ではなく稜線東側に逃げている区間のみ雪の上を歩くが、そんな場所は少ない。天気は最高、標高の影響もあるだろうが今シーズンで一番暑くTシャツで歩いても汗だくになるほど。でも雪はズボズボ踏み抜くことはなく歩きやすくワカンの出番がない。この分だと山頂まで出番なしかも(実際に出番はなかった)。今年初めての残雪らしい雪質だった。先週の桑崎山で軟雪に苦労したのが嘘のようだ。たぶん、あの雪は最近積もったものであって、今歩いている雪は真冬に積もったもので堅く締まっていると思えた。

 七郎平山への登りは夏道が埋もれ、尾根上は藪なので稜線東側の豊富な残雪を伝って登ることにするが、ここで先行者の姿があった。結構な傾斜で遠目に見るとアイゼンを出したくなるような場面だが、気温が高くキックステップが効くのでピッケルだけあれば怖くはなかった。おまけに先人のステップが使えるので楽ができた。先人集団は若者3人+老人1人の計4人で、荷物の大きさからして行き先は矢筈岳だろう。

 七郎平山は夏道は山頂西側を巻いているが、今は山頂付近西側はべったりと雪が張り付いてどこでも歩ける状態であり、山頂に立って休憩することにして稜線上を進む。先行パーティーは山頂を巻いてしまっているので少しの間トレースとお別れ。でも雪の締まりは良好なままなので問題ない。夏道が通っていない山頂なので、七郎平山てっぺんは雪原だけで標識は見あたらなかった。夏は笹原かなぁ。たっぷりと雪が乗っていて積雪が何mあるのか定かではない。周囲は背の高いブナの木が点在する明るい山頂で、日よけが無いので少し南に下がったところに生えている大きな檜の木陰で休憩。日影は快適だ!

 次は銀治郎山。相変わらず尾根上の夏道が出ている場所が多く、9割方夏道を歩ける。山頂はなだらかで広く一面が雪に覆われていた。ここで休憩中の先行4人パーティーに追いつく。聞けば私と同じ行程で矢筈岳を目指すとのこと。幕営予定地点も五剣谷岳で同じ。全員地元で新潟県内の藪山はあちこち登っているようだ。4人パーティーに少し遅れて出発したが、すぐに追い越した。

 銀次郎山〜銀太郎山間もほとんど夏道歩きが続く。銀太郎山手前のピークの登りがきついが夏道が出ているのでそちらを歩く。ピークに上がれば山頂は目の前で、稜線上と西斜面に雪が乗っているので銀太郎山山頂に興味がなければ西側から巻いてしまうことも可能であるが、全ての山頂を踏むのも目的なので稜線上を登る。尖ったピークを登り切って銀太郎山山頂。てっぺんは雪の上だが南側は雪が切れて地面が出ていたし、その先の稜線上は藪が出ていた。ここまで来れば五剣谷岳は近く、のんびりしていてもいいだろう。気温はますます上がって雪が緩み、こんな疲れる状態で距離を稼ぐよりも早朝の気温が下がった時間に歩いた方が効率がいいので、予定通り今日は五剣谷岳で幕営することに決めた。やがて4人パーティーも到着。しばし休憩。

 出発は私が先行で、稜線上は藪に突っ込むため雪が付いた西側を巻いて尾根に出た。この先は夏道はないが尾根上や西斜面には十分な残雪が残っていて藪漕ぎ不要だった。東側が切れ落ちた地形になると雪棚はズタズタに崩壊して尾根西側を巻くことが多くなった。通常、尾根西側は早く雪が解けて藪が出ているのだが、ここはまだ雪が付いていて助かった。

 最後の五剣谷岳の登りは尾根上は広く藪が出てしまい、尾根西側の雪が付いた広い斜面を登る。見上げるとなかなかの傾斜だが、取り付いてみるとアイゼンなしでジグザグに登れる程度の傾斜であった。既に出発してからだいぶ時間が経過し、久しぶりの大ザックでお疲れモードで急斜面の登りは足が重い。振り返ると4人パーティーも動き出していて雪原を黒い点が移動しているのが見えた。

 一度傾斜が緩むがまだ尾根ではなく盆地状に少し凹んだ場所で、ここなら風の心配が無く幕営できそうだったが尾根上の様子が分からないのでそのまま進む。五剣谷岳から西に延びる尾根上に飛び出してようやく矢筈岳の姿が拝めたが、尾根は右に迂回するように繋がっていて直線距離でも遠いのにさらに距離が増してアップダウンもある。山頂西側の尾根上は雪が落ちて藪が出ているように見えるが、こちらから見えない南斜面側に雪がなければ藪漕ぎだろう。

 ザックを下ろして空身で五剣谷岳山頂を往復する。山頂まで雪が続かないので途中で灌木藪の尾根に乗り移るが、うっすらと踏跡があり完全な藪ではなかった。でも灌木は伸び放題で枝をかき分けながら登る必要がある。山頂が近づくと灌木が減って低い笹が中心となり歩きやすくなった。五剣谷岳山頂は雪が消えて地面と三角点が出ていていたが、地面はでこぼこで幕営には適さなかった。地面の上で暖かく寝られると思ったのに残念。

 藪を漕いで下り、雪にありついてから空身でテントサイト探し。稜線上は広いのでどこでもテント可能だが、風が吹いた場合に逃げようがないため僅かに稜線を下ったところか雪が凹んだ場所、もしくは立木が近くテントが飛ばされないよう縛り付けられる場所を探す。少し西に進んで尾根上に藪が出てくる場所は平坦で近くに木があるため有力候補地だったが、そこから稜線北側に10mほど下ったところに棚状の平坦地があり、ここなら風よけにちょうどいい。その先の稜線は広大な平坦地でテント張り放題だが風よけが無いためNGと判断、棚状地に決定した。この判断は正解で、昼間はほぼ無風だったが深夜や明け方は西よりの風が吹いて木々がざわついていたが、テント場はほぼ無風だった。ガスを豪勢に使って水作り。やがて4人パーティーが到着、私が最初に考えた場所にテントを張っていた。標高が低い影響もあり、最低気温は+2℃程度でいつもの残雪の山と比較すれば暖かかった。ただし、早朝でも雪はクラストせず。

 翌朝も快晴。朝飯を食って防寒着、アイゼン、ピッケル、水、食料、ヘッドライトを持って出発。昨日より格段に荷物が軽く足取りも軽い。昨日の経験からワカン不要と判断した。矢筈岳までの距離と累積標高差は事前計算していないので正確に所要時間を見積もることはできないが、早ければ2時間くらいで立てるか?(なんて予想は甘すぎた)

 たっぷりと雪が付いた平坦な尾根を進み、尾根が痩せると北側斜面の雪を伝わって進んでいく。青里岳との鞍部手前の1096m峰まではほぼ雪を辿れたが、ピークからの下りは尾根が痩せて両側の雪とも落ちてしまい、傾斜が急なので灌木が茂った藪尾根直上を下るしかない。手に持ったピッケルが邪魔だ。毎年、この時期にはここの雪は落ちきってしまうようで、灌木藪の中にうっすらと踏跡ができている。でも尾根上に強固な藪(地面から枝を四方に伸ばした背の低い常緑樹)が立ちふさがっていると踏跡は消えて強引に藪を乗り越える必要がある。今は下りだからいいが、帰りにこれを登るのを考えると憂鬱になる。最低鞍部付近で灌木から薄い笹に変わって歩きやすくなり、最低鞍部には手ぬぐいの落とし物だろうか、木に結ばれていた。

 登りにかかると尾根南側に雪が付くようになり藪から解放され快適に歩けるようになる。進んでいくと徐々に傾斜が増してくるがアイゼンを使うほどではない。急斜面の途中でクレバスが横断し直進できない箇所が出現、右は藪が出ているので左の急斜面を巻く。クレバスを巻き終わって稜線に復帰すれば良かったのだが、そのまま巻き続けたら上部は雪庇の壁になって登れなくなってしまった。前方には緩斜面が見えているのでそこから上がれるので問題ないが、トラバースは稜線上を歩くより脚力を使うので損をしてしまった。雪庇の壁が消えて傾斜が緩んだところで尾根上に復帰した。

 青里岳山頂はもう一段上がった場所で、右から巻くように山頂に飛び出す。東西に細長い山頂で、今は雪庇に覆われて地面より数m高いだろう。当然、三角点は見えない。立木はなく360度の大展望。既に川内山塊中央部に立っているので周りは山ばかり。北東の白い飯豊は今日も見えていた。風はほとんど無く空気の透明度はイマイチで、南は燧ヶ岳がやっと見える程度だった。でも毛猛山が見えたのはちょっとうれしかった。今年はまだ国道が冬季通行止めで、毛猛山に登るためには長い国道歩きもしくは自転車使用が必要だ。矢筈岳はかなり近づいたが、まだ半円状に右に迂回してのアプローチが必要で、五剣谷岳〜青里岳間より時間がかかりそうだ。まだ体力的に休憩は不要と判断、すぐに青里岳を後にした。

 尾根は一度南東に屈曲。山頂直下で20mほど藪を漕いで稜線東側の残雪帯に出る。次に尾根が西に曲がるが、ここも既に藪が出ていた。しかしまだ雪解け直後のようで場所を選べば笹が完全に立ち上がる前で歩きやすい。しかし尾根が広がってルート判断が難しくなり、藪が濃い南側を下り始めていた。ある程度下ると尾根全体を残雪が覆うようになり、低いブナが雪上に飛び出した見晴らしのきく広い尾根に変わる。先が見通せれば藪(ブナの枝)が薄い箇所を選んで歩けるようになり、傾斜もそれなりにあって快調に下れる。でも帰りの登り返しを考えるときついなぁ。

 青里岳から見えていたので分かっていたが、この先も残雪が続き藪漕ぎはなく快調に進む。雪棚崩壊が進んで一時的に藪尾根に逃げ込むことはあっても距離は短い。1054m峰への登りは結構な急斜面で、雪が締まっていたらアイゼンが必要な場面だが、今はキックステップで問題なく登れるため滑落防止のピッケルがあれば不安はない。たぶん数年前の私だったらビビリながら登っただろうが、経験を重ねると安全限界がどのくらいか分かるようになり、無用な緊張はしなくなる。

 この登りは体力的にもきつく、既に出発から3時間が経過したのでピークを過ぎた平坦区間のブナの木陰で休憩。もう矢筈岳は目の前で、山頂に立つ人影がはっきりと目視できた。魚止山経由の登山者は早くも山頂に到着しているのだ。あちらからも私の姿は見えるはずだが分かるかなぁ。休憩を終えて出発。しばらく残雪帯を歩くが、1180m峰で尾根が左に曲がったところより先は北斜面も南斜面も雪が落ちていて、山頂まで藪漕ぎが待っていた。灌木藪が続くがここも薄い踏跡があって完全な藪よりマシであった。周囲に雪がないと気温が上がって暑さを感じる。この辺でピッケルをデポしても大丈夫かとも考えたが、万が一山頂直下で危険箇所があった場合、わざわざ藪の中を取りに戻るのは面倒なのでそのまま突き進む。しかし、最後までピッケルの出番がないまま山頂直下で藪を突き抜け、先客がいる矢筈岳山頂に到着した。

 山頂は既に雪が消えて地面と三角点が見えていて、予想外に立派な山頂標識が立っていたのには驚いた。銘板には「矢筈山岳会」と書かれていて、地元で担ぎ上げたらしい。高い木が無いので360度の大展望。目立つ山では川内山塊最高峰の粟ヶ岳、守門岳、浅草岳、狢ヶ森、御神楽岳。南側に霞んで見えているのは毛猛山、越後三山、荒沢岳、会津駒ヶ岳〜丸山岳〜会津朝日岳の固まり。その右上には微かに燧ヶ岳。西方の白いピークは米山だろうか。今日も好天だが風がないので早くも暑くなってきた。五剣谷岳から矢筈岳まで約4時間かかったが、両者の標高差はほとんど無いので帰りも同程度の時間がかかりそうだ。これに暑さも加わるときついなぁ。予定通り、今日も五剣谷岳で幕営にするか。それなら矢筈岳でのんびりしても問題なし。

 魚止山方向からは次々と登山者がやってくる。現在では矢筈岳は魚止山経由がメインルートであるのは間違いない。下手をすれば日帰り可能だし。でもそちらからやってきた登山者の話を聞くと、魚止山コースは尾根上の雪はほとんど落ちてしまい「藪時々雪」だそうだ。でもこれだけ人が多ければ(1時間で10人程度)数年後には明瞭な踏跡が自然発生する可能性が高いだろう。

 次から次へとやってくる登山者と話をしながら、なんだかんだで1時間ほど休憩してから出発。同じく五剣谷岳を今朝出発した4人パーティーはもうすぐ矢筈岳山頂というところまでやってきていて、山頂手前の1230m峰の灌木藪尾根ですれ違う。雪がない藪の中で直射日光を浴びると暑い! 雪に乗るとほっとする。1054m峰の急斜面の下りは前を向いたままノーアイゼンで下れた。たぶん下りの所要時間は登りの1/4くらいではないだろうか。青里岳の登りはきつかった! 青里岳山頂で休憩。4人パーティーの姿が見えないか雪の稜線を観察していると、黒い点が移動しているのを発見。ただ、4つではなく1つだけ。もしかしたら単独行の人が魚止山方面から縦走だろうか? いいスピードで歩いているのが見て取れた。ただ、ここまでまだ1時間くらいかかる位置であり、写真だけ撮って出発。当日、テントに戻ってきた4人組に、他に青里岳方面に向かった人がいなかったか確認したところ誰もないとのことで、あれはカモシカだったのだろうとの見解に達したが、帰ってから写真を検証したところ、4本足の動物には見えず人間のように縦長だった。正体は何であったのか。なお、私がテント場に戻ってから4人パーティーが戻ってくるまで他に人はやってこなかったし、4人パーティーが矢筈山にいる間に青里岳方面に向かった登山者もいなかったそうだ。

 青里岳を下り、最低鞍部から藪尾根に突入。ここが最後の苦難。相変わらず背の低い常緑樹がやっかいだ。やっと藪を乗り切って雪に乗って一安心。以降はほぼ雪の上を歩いてテントに到着。疲れた〜。まだ時刻は早いので歩こうと思えば歩けるが、この暑さでは気力が失せる。明日朝の涼しい時間帯に歩く方が圧倒的に楽なのでこのまま幕営。気温が高く本日の水作りは燃料は使わず「自然解凍」で済んでしまった。やがて4人組も到着、元気に宴会を始めていた。

 翌朝、天気予報は午前中は曇りを告げていたが、明るくなると薄曇りだった。気温は朝から高めだが少し東風があって快適だ。テントの中で食事中?の4人組に挨拶してお先に出発。五剣谷岳の下りは滑れる傾斜では豪快に滑る。ただし尻セードではなく靴底を滑らせてのグリセードだが。銀太郎山までは主に稜線西側を巻きつつ進み、気づいたら銀太郎山も西側から巻いてしまって帰りは山頂を踏まなかった。代わりに銀治郎山山頂で休憩。天候は予報通り曇りで風もあり、涼しくて快適だ。七郎平山は西を巻いてしまい、木六山への登りで軽装の単独男性と交差。4人パーティーの仲間でお迎えに来たそうだ。1週間で1mは雪解けしているとのこと。この男性に「さくらんど温泉」の割引券をいただいたのだが、実際には回数券でタダで入浴できてしまった。そうだと分かっていればもっとよくお礼を言っておけばよかった。木六山山頂で休憩中にも男性が登ってきて、この人もパーティーのお迎えにきたそうだ。その後もポツポツと単独の男性がやってきた。そのうち1人は仏峠でデジカメを拾ったとのことだが落とし主は見つかっただろうか。

 水無平への下りも夏道を使わず雪を利用して斜面を下ったが、2日前と比較して明らかに積雪が減って地面が出ているエリアが広がっていた。ただ、元々藪が薄い斜面なので問題なし。水無平も1カ所だけ地面が出ていた。ちょっと心配だった登山道入口も目印のおかげで簡単に判別できた。

 仏峠を越えて450m峰手前で登山道に従って右に巻き、少し遠回りになっても登山口がどこなのか確認してみることにした。良好な道が続き、このまま斜面を巻いてずいぶん東に下ろされるのかと思いきや、東尾根に上がって尾根を下り、途中で尾根を外れて北に下っていく。最後は私が斜面に取り付いた残雪帯に下っていったのであった。登りでは杉林の中を進んでしまったが、それより東に進んでいれば登山道に出られたのだ。登りでは気づかなかったが残雪が消えて夏道が出ている箇所に目印がぶら下がっていた。よーく見ればこれが発見できたはずだ。逆にいえば雪が残る時期は夏道の位置を知らない人がここにたどり着くには、この目印が無いと絶対に不可能である。

 残雪の斜面を下っていると、林道の東側から大ザックの単独男性が登場。あちらから登ってくる人がいるとは。話しかけてみるとスタートは私と同じ林道崩壊地で、登山道入口を探して右往左往していたそうだ。私と同じだ。そこに私が下ってきてルートが判明し、この男性は最初から夏道を歩くことができた。装備からして矢筈岳に間違いないだろう。明日の天気は大丈夫だと思うが明後日はどうだろうか。

 林道は峠付近のみ雪が残っていたが、他はすっかり解けて無くなっていた。ただ、崩壊地2カ所はそのままなので、来年に開通するのかは不明である。現状が続けば来年はチャレンジランド杉川が起点となるだろう。最初の崩壊地付近の車は私のものだけで、少し下って杉川の橋付近にもう1台あるだけだった。


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